私好みの新刊 202007

『ゆきのけっしょう』武田康男/監督・写真 小杉みのり/構成・文 岩崎書店

 雪は「天から送られた手紙」と書いた中谷宇吉郎氏を思い出す。中谷氏は、

極寒の北海道で乾板にふりそそいだ雪を素早く写しとったり、北大内に設けら

れた冷凍実験室で人工雪を作り、結晶の形と温度との関係(ナカヤ・ダイヤグラ

)を解明された。

「今は撮影機材も進化して、以前に増して性能はよくなった」とこの本の著者

は書いている。この本の著者も空の探検家「北海道や関東の山などへ出かけて、

たくさんの結晶を観察して写真におさめた」と記されている。現代の美しい雪

の結晶の数々をこの本は見せてくれている。

 初めに、冬の吹雪と車の窓に積もった雪の粒だろうか、結晶が見える。次に

結晶部分のクローズアップ写真。いくつもの違った形が見える。次に、黒っぽ

い帽子に積もった雪だろうか、見事な結晶が見える。

「けっしょうが どこでうまれるか しっている?」と問いかけられる。ん、

どこだろう。まず寒い空で「けっしょうのあかちゃん」が生まれるとか。少

しずつ大きくなってやっと正六角形の砂つぶぐらぃになる。その六角形の角

から枝が伸びていくとのこと。枝の先に、いろいろな形のフリルをつけて。

「くもの なかで つぎつぎに ふしぎな かたちや もようが うまれる」

とか。それぞれの美しい写真が載せられている。

みんなして微妙に違う自然のオブゼだ。堂々とした立派な六角の結晶もできる。

雲の粒から重い結晶に発展していくこともある。なかには、針状の結晶もある。

自然の中なので、

「ほんとうはね、ととのった かたちの けっしょうは みつからない」

とある。でも。それでも自然にできる結晶はきれい。  

        201912月 1,300

 

『このあな なんじゃ』 きむらたえこ/さく みぞぐちともや/え 仮説社 

 シンプルなしかけ絵本。小さな子どもたちが喜ぶかな。今回は「ひがたのいき

もの へん」である。干潟を歩いていると、小さな生き物の穴をよく見かける。

「いったい、この穴の主はだれだろう」と、大人でも興味をそそられる。そこを

「なんじゃ なんじゃ」と問いながら、ぽんと白紙を開くと〈主〉が出てくると

いうしかけだ。海辺にはあんがいいろいろの生き物が生息している。たとえば

 「なんじゃ なんじゃ このあな なんじゃ」。ぽんと上の紙を開くと

 「すなはまの だんごむし ハマダンゴムシ じゃ〜!」という具合。

 「なんじゃ なんじゃ このあな なんじゃ」。ぽんと上の紙を開くと

 「おいで おいでする カニ ハクセンシオマネキ じゃ〜!」とある。

藻場にはこんなのもある。

 「な〜んだ ただの くさじゃ」「 と おもったら・・・」。紙を見開くと

 「いきものだらけ  じゃ〜〜〜!

   画面は、藻場に棲む生き物だらけ。

という具合。アサリ、スナモグリ、ニンジンイソギンチャク、タマシキゴカイ、

ツバサゴカイ、藻場の生き物と続く。各絵がシンプルでかわいい。

 終わりに見開きの「ひがたのいきものずかん」として、各ベントス(浜の定生生物)

の説明がある。大人はちょっと読んでおくと、にわか海辺の博士となれる。

最後に「「ひがた」って なんじゃ」のページもある。干潟についてうんちくが

語られている。干潟の生き物はそう簡単には見つからないようだ。干潟を探検す

る方法も書いてくれている。「来年の夏は、どこか近くの干潟を散歩するか」

とわくわくしてくる本である。          20204  1,500

 

              新刊紹介7